• 2014年2月1日

超高齢化する日本の社会〜2030年代に向けた新たな生活基盤を

プロジェクト・リーダー 小川全夫
(特定非営利活動法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター理事長)

変化する人口構造に対応できない現代社会

研究01
現在の日本の社会制度は高度経済成長期にできたもので、人口が増えていくことを前提とした仕組みとなっています。ところが、人口増加の恩恵を受けていた時代は1995年頃に終わっています。その後、2005年頃を境として日本は人口減少期に突入していくのですが、社会制度も人々の意識も以前のままです。そのためさまざまな課題が出現し、その対応は後手後手に回っています。

とりわけ深刻なのが地域のあり方です。高度経済成長期に仕事場や学校が地域の外につくられたため、仕事をする者、学ぶ者は地域の外へ出て行くようになりました。その結果、残されたのは高齢者や家庭の主婦、小さな子どもたちといった弱者ばかりになりました。地域で問題解決をする力が失われ、孤独死や買い物難民といった問題が噴出しています。これらの問題に対応できる組織やノウハウもないのが現状です。

国では団塊世代が後期高齢者の仲間入りをする2025年をめどにさまざまな施策が行われていますが、私たちは2030年代をひとつの重要なステージとして考えています。この頃には団塊ジュニア世代が定年を迎え、高齢者の仲間入りをします。団塊世代は子どもも多く、まだ血縁者による支援が期待できます。ところが、団塊ジュニア世代は子どもがいない、あるいは一人っ子の家庭が多く、これでは定年後の世代を支えることができません。2030年代の方が、はるかに問題が深刻だと思われます。

「おたがいさま」で取り組む地域の課題

2030年代には単純に人口が減るだけでなく、労働力として社会を維持してくれる生産年齢人口の比率が下がり、高齢者が人口の25~30%を占めるようになります。こうした社会では、これまでのような年齢による区分けや倫理観では社会を支えることができません。まったく新しい社会の仕組みをつくる必要があるのですが、私たちはこれを「おたがいさまコミュニティ」と名づけました。年齢に関係なく余力のある者が社会を支えていく、そんなコミュニティです。

なぜ「おたがいさまコミュニティ」をつくる必要があるのかというと、高度経済成長期に構想されたコミュニティが、あまりにも個人主義的で、支援策も分業的で、今となってはあまりにも頼りにならない状況に陥ってしまっているからです。行政や行政協力団体の仕組みはあっても、それを担って実際に地域の課題に取り組む人材を確保できない時代になっているのです。今こそ、発想の転換を図って、たとえどんな地域課題が出てきても、住民が「おたがいさまだ」という精神で受け止めることができれば、解決する道は開けることを示し、その道を拓くための支援に取り組むべきだと思います。

「おたがいさまコミュニティ」では、地域の人々が「人ごとではなく自分たちの問題なのだ」と気づくことが重要です。さらに地域の資源を使って問題解決の方法を探り、当事者だけで解決できない場合は事業者を含めた周囲の支援を受けながら解決策を考えていきます。また、こうした活動全体をバックアップする総合的な支援の仕組みも必要だと考えています。

高齢化の課題先進国としてアジアのモデルに

このプロジェクトは福岡市でスタートしましたが、福岡は若い人が多く、全国でも比較的元気な都市だといわれます。けれども地域の奥深くに入ってみると、深刻な状況がすでに起こっているのです。生産人口の減少で採算がとれなくなり、公共交通が撤退して買い物にも困る地域の人々。高齢化が進み、家や財産の処分もままならず放置される空き家。都会のマンションでは住民同士の交流がなく、管理組合が崩壊して自治機能が発揮されていません。高齢化が一足早く進んだ地方の過疎地域では、すでに助け合いのモデルがいくつか出てきていますが、その都会版を早くつくらないと社会が崩壊してしまいます。

この問題は日本だけのものではありません。日本の経済発展を手本に国を発展させてきた韓国や中国、台湾、シンガポールといった国々も高齢化の問題に直面しつつあり、さまざまな高齢化対策を打ち出しつつあります。こうした国々に対しても、このプロジェクトのモデルが課題解決の糸口となる可能性があると考えています。

日本では医療、介護、家族支援などが別々のプログラムになっており、情報の共有も行われていません。これをワンストップで対応できる仕組みづくり、その対応にあたる人材の育成、さらには適切なアドバイスができる後方支援の体制づくりが急務だと考えています。

【プロフィール】
小川先生写真

小川全夫(おがわたけお)
特定非営利活動法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター理事長/熊本学園大学教授

1970年九州大学大学院文学研究科修士課程修了。1996年久留米大学博士(文学)号取得。宮崎大学、山口大学、九州大学大学院人間環境学研究院、山口県立大学大学院を経て熊本学園大学社会福祉学部教授。特定非営利活動法人アジアン・エイジング・ビジネスセンター理事長。福岡市アジア都市研究所副主幹研究員。九州経済調査協会研究委員。アジア太平洋アクティブ・エイジングコンソーシアム創始者。